岡垣町波津地区に伝わる「口説き盆踊り」が8月14日・15日、波津区公民館前(岡垣町大字波津)で開かれた。
「口説き」は、一つの物語を歌詞にして歌い継ぐ盆踊り歌。波津地区では「那須与一」や「磯節」などを太鼓の音に合わせて歌い継いできた。同地区では毎年8月14日に初盆を迎えた故人、15日に戦没者を供養するため盆踊りをそれぞれ行っている。会場には、故人を悼む祭壇も設ける。
伝統を受け継いできたのは、半世紀以上にわたり活動する波津口説保存会。同団体の初代会長を務めた宗岡光之さんによると、自身は18歳の頃、地元青年団の仲間と地区の年配者から太鼓を習った。20代になると、口説きが廃れることへの危機感から青年団の仲間9人で保存会を結成。当時の歌い手3人が歌う口説きを自ら書き取り、歌詞カードとして残した。現在もその歌詞カードをコピーして使っている。1曲は20~30分ほどで、長いものでは1時間以上に及ぶという。
1993(平成5)年には、当時小学5年生だった宮本芳裕さんが、いとこの中村圭吾さんと校区の夏祭りで太鼓をたたいたことをきっかけに、若い世代も保存会の活動に加わるようになった。2人は10代後半から歌い手も務めるようになり、現在、宮本さんは保存会会長を務め、盆踊りを前に波津地区の児童に太鼓を教えている。
波津子ども会には現在、4世帯の子ども5人が所属する。盆踊り前の太鼓の練習には、会員の未就学のきょうだいや、子ども会を卒業した中高生、地区外で暮らす保存会メンバーとその子どもも参加している。宮本さんの4人の息子も父から太鼓を習っており、小学5年生の四男は「太鼓を連打するところが難しいけれど、みんなでたたいてそろったらとてもうれしい。大人になって別の所に住んでも、波津の盆踊りを手伝いに帰ってきたい」と話す。
14日は7人の子どもたちが太鼓をたたき、櫓(やぐら)の上では宮本さんらが「那須与一」などの口説きを歌った。参加者は太鼓の音に合わせて踊った。今年、祖母の初盆を迎えた石田裕貴さんは、兄と共に小学生以来となる太鼓のばちを握った。「太鼓をたたくのは小学生以来だが、これを機に来年からも波津の盆踊りで太鼓をたたきたい」と話す。
宮本さんは「盆踊りは同窓会のようなもの。成人してから戻ってきて太鼓をたたく人もいる。盆踊りで初盆を迎えたいという声が一人でもあるなら、区と協力して続けていきたい」と意欲を見せる。